マンションの耐用年数とは?耐用年数間近なら住宅検査を行おう
住んでいるマンションや購入予定のマンションについて、寿命や耐久性を把握しておくことは、将来発生するリフォームや大規模修繕工事の必要性を予測するためにも欠かせません。
この記事では、マンションの耐用年数の意味や、マンションの耐用年数を把握しておくべき理由を解説します。
マンションの寿命を示す「耐用年数」
マンションの耐用年数には2種類の意味があり、それぞれの意味については次の項目で詳しくご説明しますが、簡単に説明すると、耐用年数は「マンションの老朽具合を予測する数値」と言えます。
耐用年数はマンションの様々な事象に関連している
耐用年数は、マンションでの生活、購入、売却など様々なシーンで深く関わる数値です。
例えば、現在住んでいるマンションの耐用年数を知ることで、住んでいる間にあと何回大規模修繕工事が行われるか予測しやすくなります。
また、マンションを売却する場合は、売却予定のマンションが、耐用年数に対しどのくらい築年数が経過しているか知っておくと、買い手の動向や市場相場が見極めやすくなり、売却を有利に勧められるかもしれません。
耐用年数間近のマンションは住宅検査を済ませよう
購入を予定しているマンションの築年数が、耐用年数に迫っていた場合、購入前にインスペクション(住宅検査、住宅点検のこと)を実施しておくと良いでしょう。
インスペクションでは、マンション専有部分で起きている劣化や、共用部の修繕履歴などの調査が行われます。
購入前に済ませておくべきリフォーム箇所や費用がわかり、将来的に必要なリフォームなども教えてもらえます。
2種類の「耐用年数」を区別しよう
耐用年数には、税法上の「法定耐用年数」と、物理的な耐久性を示す「耐用年数」という2種類の意味が存在します。
2種類の耐用年数は、使われるシーンや意味が異なりますので、違いを区別しておきましょう。
マンションの税法上の「法定耐用年数」
法定耐用年数とは、「減価償却(げんかしょうきゃく)」という会計処理で使われる数値で、税法で定められています。
減価償却とは、マンションのような、高額な資産の購入費用を会計する方法のことです。
マンションなどの高額の資産を購入した費用は、一括でその年の支出にすることはできませんので、一年間に減少した価値(減価)の分だけを支出として計上しなければなりません。
このとき、資産が一年間でどのくらい価値が減少するか定めた数値が、「法定耐用年数」です。
減価償却の対象となる資産には、マンション以外にも、車や機械、業務用のパソコン、美術品など様々な種類がありますので、法定耐用年数は資産の種類ごとに設定されています。
マンションは法定耐用年数表の中では「建物」に分類され、構造は「鉄筋コンクリート造」、用途は「住居用」に該当しますので、法定耐用年数は47年です。
参考1:国税庁『耐用年数表』https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34353.php
マンションの耐久性を示す「耐用年数」
税法で定められた耐用年数とは別に、マンションの物理的な寿命を意味する耐用年数もあります。
例えば、「住宅の寿命は木造なら約30年、RC造なら60年」といった表現が、物理的な耐用年数に該当します。
ただし、物理的な耐用年数は、あくまでも過去の平均的なデータにもとづいて、「住宅は30年や60年前後で、何かしらの不具合がほぼ確実に出始める」と考えられているだけに過ぎません。
国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」の報告書に掲載されている、『建物の平均寿命実態調査』小松幸夫(2013)によると、RC造マンションの寿命は、2011年時点で約68年という研究結果が出ています。
さらに、同研究では平均寿命は毎年延びているという結果も出ており、従来の「スクラップアンドビルド(壊して新たに建てる)」から、「リフォームして長持ちさせる」という考え方に移行しつつある昨今、マンションの物理的な耐用年数は定期的なリフォームによって徐々に延びていると言えるでしょう。
参考2:国土交通省『中古住宅流通促進・活用に関する研究会』
http://www.mlit.go.jp/common/001014514.pdf
耐用年数がマンションに与える影響とは
耐用年数はマンションの売却・購入・住んでいる間のリフォームなど、マンションで起きるすべての事象と密接に関係しています。
マンションに現在住んでいる人も、マンションの購入、または売却を考えている人も、それぞれのタイミングで耐用年数がどのように関わるか、知っておかなければなりません。
マンション売却時と耐用年数
マンションの売却によって得た利益に対して課せられる税金が、「譲渡所得税」です。
譲渡所得税は、マンション売却額に対し「購入時のマンションの建物価格」と「売買に要した費用」を差し引いた金額に課せられますので、売却益が多いほど税金は高くなります。
ただし、「購入時のマンションの価格」は、減価償却で差し引かれた後の金額を用います。
築浅で残存耐用年数が40年以上残っているようなマンションであれば、購入時のマンションの価格に対し、減価償却額はわずかですので、売却益に対してかかる税金は少額に収まるでしょう。
一方、築年数が約40年経っているマンションの場合、残存耐用年数は残り少なく、購入時のマンション価格はほとんど減価償却されて売却益が多くなり、その分、譲渡所得税も高額になる恐れがあります。
もっとも、住居用マンションの場合、確定申告を行えば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用されるため、控除額で売却益が0円になり、譲渡所得税を発生させずに済むケースがほとんどです。
しかし、控除後も売却益が残るような場合は、購入時の価格が耐用年数でどのくらい減少するか注視しておきましょう。
なお、築年数が耐用年数目前のマンションを売却する側になった場合は、専有部分のホームインスペクションを実施すると良いでしょう。
インスペクションの調査結果で、建物の劣化や構造上の不具合がないことをアピールできれば、耐用年数間近という弱みを払拭することも可能です。
マンション購入時と耐用年数
マンションを購入する時、ほとんどの人は住宅ローンを組んで購入資金に充てますが、住宅ローンの審査では、購入を予定しているマンションの耐用年数が必ず調べられます。
住宅ローンを提供する金融機関は、もし債務者がローンを返済できなくなった時に備えて、購入予定の住宅を担保にし、万が一返済ができない場合は担保を競売にかけて残債に充当します。
この時、担保にする物件の築年数が耐用年数に迫っていると、競売にかけてもローン残高が返済できるほどの売値にならないかもしれません。
従って、マンションを購入する際は、見た目のきれいさや立地といった目に見える要素だけでなく、耐用年数や大規模修繕工事の履歴などもチェックして、融資が通りやすい物件か調べると良いでしょう。
専有部分のホームインスペクションを行えば、劣化や不具合の有無が明らかになり、審査時の有力な資料にもなります。
さらに、ホームインスペクションを行うことによって、劣化箇所のリストアップやリフォームにかかる費用も予測できますので、購入するマンションの安全性を知るためにも、融資の有利・不利に関わらず、住宅検査を済ませておくと良いでしょう。
マンション入居時と耐用年数
マンションでは10〜15年に1度のタイミングで、外壁や防水機能、共用部などの大規模修繕工事が行われます。
耐用年数に近づくほど修繕箇所も多くなりますが、過去に大規模修繕工事を定期的に行っていないマンションほど、工事の作業量が増えて工事費用も高額になってしまいます。
劣化箇所が増えて修繕が広範囲に及べば、将来的に、修繕積立金の値上げが行われるかもしれません。
住んでいるマンションの耐用年数を確認し、過去に大規模修繕工事が何度行われたか周期を計算して、修繕積立額を確保しながら定期的にメンテナンスを行われているか調べておくと良いでしょう。
おわりに
マンションには税務上の耐用年数と、物理的な寿命を示す耐用年数がありますが、どちらもマンションを購入・管理するうえでは深く関わる要素です。
もしマンションの耐用年数が残りわずかでも、ホームインスペクションを行うことによって、劣化箇所が明らかになって売却が有利になったり、購入前の適切なリフォームで劣化を最小限に抑えたりすることができるでしょう
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